MCTを上手に活用して認知症予防を:広川慶裕先生インタビュー

2018年1月23日

ひろかわ脳とこころの健康クリニック 院長 広川慶裕先生インタビュー

みなさん「MCT」をご存知でしょうか。MCTとは、近年認知症(アルツハイマー型)に対する効果が確認されつつある「中鎖脂肪酸」を含むオイルのことです。そんなMCTをMCI(軽度認知障害)の予防・治療に積極的に取り入れているひろかわ脳とこころの健康クリニック院長の広川慶裕先生に、MCTのもつ働きと取り入れ方についてお話をうかがいました。

話し手
広川慶裕先生
ひろかわクリニック院長
広川慶裕先生
この記事の目次
  1. ブドウ糖の代替エネルギーであるケトン体が中鎖脂肪酸から生まれる
  2. MCIの予防や治療の現場でも活用されているMCT
  3. MCTを継続して生活に取り入れることで脳の活性化を
  4. 広川先生のクリニック情報
  5. ●ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)
  6. ●品川駅前脳とこころの相談室

ブドウ糖の代替エネルギーであるケトン体が中鎖脂肪酸から生まれる

──まずMCTがどのようなものなのか教えてください。

MCT(Medium Chain Triglyceride)とは「中鎖脂肪酸100%のオイル」のことです。主にココナッツやパームフルーツを原料として作られています。アルツハイマー型認知症への効果が期待されている中鎖脂肪酸を効率よく摂取できる食品として、近年医療分野でも注目を集めています。

──中鎖脂肪酸がアルツハイマー型認知症によいとされるのはなぜですか。

脂質を構成する成分である脂肪酸は、結びついている炭素の数により「短鎖」「中鎖」「長鎖」という3つの脂肪酸に分類されます。中鎖脂肪酸は、非常に吸収されやすいという特長をもっています。その速度は長鎖脂肪酸の4〜5倍ともいわれます。体内に取り入れられた中鎖脂肪酸は、直接肝臓に届き、脳や心筋、骨格筋、腎臓などのエネルギー源となるケトン体に短時間で代謝され、細胞に吸収されます。

脳はこれまでブドウ糖が唯一のエネルギー源とされてきました。しかし、アルツハイマー型認知症になると、脳では、ブドウ糖を代謝するためのインスリンが働きにくくなり、ブドウ糖をうまく利用できなくなります。そのため、エネルギー不足になり、脳が十分に働かず、認知機能の低下をもたらすことになるのです。

そんなブドウ糖に代わって脳のエネルギー源として注目されるようになったのがケトン体です。ケトン体によって脳のエネルギー不足を補うことで、認知機能が向上する例も確認されるようになっています。中鎖脂肪酸がアルツハイマー型認知症によいとされるのは、このケトン体を効率よく産生するためです。

──ケトン体とはどのようなものなのですか。

ケトン体とは、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの総称です。そのうちβ-ヒドロキシ酪酸は、脳細胞に必要なものだけを取り込むために機能する脳血管の膜「脳血管バリア(血液脳関門)」を自由に通過することができます。

そのため、いち早く脳の細胞内に入り込むことができ、エネルギー源になることが可能なのです。ブドウ糖の場合は、脳血管バリアを通過するために、何段階もの代謝経路を経るため、エネルギー源となるまでにある程度の時間を要します。即効性という面では、ケトン体が優位であるといえるでしょう。

──そのケトン体をMCTによってうまく取り入れることができるということですね。

そうです。MCTは中鎖脂肪酸100%によるオイルなので、結果的にケトン体を素早く容易に取り入れられることになります。

MCIの予防や治療の現場でも活用されているMCT

クリニック内には、脳活も含めデュアルタスクによる運動療法を行うリハビリルームがある

──先生は、MCI(軽度認知障害)の早期発見・早期治療、そして予防に取り組まれているわけですが、MCIの段階ではどのような対策が重要になるのですか。

MCIは、認知障害はあるものの、まだ認知症とはいえない状態のこと。この段階でどのような対策・治療を行うかが、認知症に進行するかどうか、あるいは健常者に戻るかという分かれ道になります。

私は、認知症やMCIは生活習慣病の延長にあると思っています。ですから、MCIの段階で、薬物療法と併行し、生活習慣の改善を図ることがとても重要であると考えています。

──生活習慣の改善のために具体的にはどのようなことを行っているのですか。

生活習慣を改善するトレーニングとして、主に「食事」「運動」「脳活」の面から対策を行っています。

食事療法では、「高タンパク質」「高必須脂肪酸」「低糖質」「高ビタミン」「高食物繊維」の5つを柱にしています。特に「低糖質」「高ビタミン」がポイント。糖質摂取を抑えることで、体内で自ら糖を生み出す力を高める一方、エネルギーを生み出す回路(TCAサイクル)の潤滑油となるビタミンを多く取り入れることで、回路の働きを活性化します。さらに、不足しがちな栄養をサプリメントで補うようにしています。

運動療法としては、まず「歩く」など日常的にできる運動を継続して行うようにしてもらいます。そのうえで、脳活と組み合わせた「デュアルタスク(二重課題)」によって、身体と知能の両面からトレーニングを行っています。2つ以上のことを一度に行うことで、運動機能だけでなく、脳の機能にも負荷をかけ、その働きを活性化するものです。例えば、リズムに合わせたり、歌ったりしながら、指を折るなどの簡単な動作を行います。このとき、動作をずらして行うと、さらに脳への負荷がアップし、脳の活動性が高まります。

これらは、通院時だけでなく、日常生活の中で続けて行い、習慣化させることが大切です。

──そのトレーニングの中でMCTを活用されているのですか。

はい。毎日の食事療法の中で、サプリメントの1つとしてMCTを摂っていただくようお勧めしています。

MCIの段階でも、ケトン体を積極的に取り入れて脳の活性化を図ることは有効です。ケトン体によって活性化した脳では、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβタンパク質が蓄積しにくくなります。つまり、ある程度アミロイドβタンパク質が蓄積していても増えなくなるということです。

これはあくまでも私見ですが、認知症に進行したばかりであれば、ケトン体で脳の働きを改善させることによって、蓄積していたアミロイドβタンパク質が減少することもあるのではないかと考えています。私がこれまでにかかわった患者さんの中には、そのような経過を辿った方が何人かいらっしゃいました。

MCTを継続して生活に取り入れることで脳の活性化を

──MCTを取り入れる場合、何か決まりはあるのでしょうか。

特に難しい決まりはありませんが、「1日30g(大さじ2杯)まで」は守ってください。ケトン体は摂取しただけエネルギーとなることはわかっているのですが、摂りすぎると下痢などの消化器症状が起こります。そうならないために量を設定しています。量を守れば、朝でも夜でも都合のよいタイミングで摂取してもらって構いません。

──どのようにして摂取すればよいのか、具体的に教えてください。

MCTは無味無臭なので抵抗感は少なくて済むと思いますが、初めての場合は、ドレッシングやみそ汁に入れると摂りやすいでしょう。私の場合は、コーヒーに豆乳と一緒に加えたり、カシスの濃縮果汁を水で割ったものに加えたりして飲んでいます。

──MCTを摂取することによる変化は実感できますか。

継続して摂取されている患者さんからは、「頭がすっきりした」という声をよく聞きます。日常生活での活動量も増え、私からみても表情が明るくなっていくのがわかりますよ。

──これから取り入れてみたいという人にアドバイスをお願いします。

MCTは効率よくケトン体を補給できる食品です。毎日の食事の中で簡単に摂取できるので、まずは続けてみてほしいと思います。

ケトン体は、MCIや認知症の方だけでなく、認知症を予防するという面からも有効性が期待できるものです。これまでの治療実績を通して、また私自身の経験からも、その効果を実感しています。

広川先生のクリニック情報

クリニック2 クリニック3 クリニック1

●ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)

京都府宇治市宇治妙薬24-1 ミツダビル4F
TEL:0774-22-3341(月-金:9:30-17:00)
http://www.j-mci.com/

●品川駅前脳とこころの相談室

東京都港区高輪3-25-27 アベニュー高輪603
(「品川駅前郵便局」が入っているビルの6階)
TEL:03-6459-3201(月-金:9:30-17:00)
※相談時間以外は転送され、担当者が対応いたします。
http://www.j-mci.com/tokyo/shinagawa.html

▼関連記事



このページの
上へ戻る