認知症カフェ:家族も患者も笑顔になるその内容は?探し方は?
家族に認知症の方がいることは、最近では決して珍しくはありません。患者の介護を家族のみで抱え込んでしまう家庭も少なくないでしょう。
そんな認知症の方の外出のきっかけにもなっている認知症カフェは、当事者や家族、地域住民、専門職等が集う場として日本全国で開催されています。
このページでは、認知症カフェの概要やそのメリット、近隣の認知症カフェの探し方などを詳しくご紹介します。
- この記事の目次
認知症カフェってどんなもの?

認知症になると、気力の喪失や失敗への不安から、家に閉じこもりがちになることがあります。介護をしている家族も、徘徊や事故への懸念から外出を控えさせてしまうこともあるでしょう。家の中ばかりで過ごすと社会との接点を失い、症状の進行が加速してしまう恐れもあります。
また、介護する側にとっても、常に閉鎖された家庭の中で介護を続けることは大きなストレスです。
このような状況を回避し、当事者だけでなく、介護家族、専門職、地域の人々が集まり、同じ状況の仲間が皆で認知症に向き合う場こそが認知症カフェです。
様々な情報交換やそれぞれの心のケアも大切な目的の1つとなっています。
認知症カフェが生まれた背景

認知症カフェは福祉大国オランダでスタートした「アルツハイマーカフェ」が起源となります。その後、イギリスなどヨーロッパを中心に広まっていきました。
高齢化が進む日本では、2025年には5人に1人が認知症になるといわれています。この予測をうけ、政府は対応策に乗り出しました。その中で推進されているのが認知症カフェの普及です。
初めて認知症カフェに言及したのは2012年に策定された「オレンジプラン」。「認知症の人やその家族等に対する支援として、認知症カフェの普及などにより、認知症の人やその家族等に対する支援を推進する」とあります。
そして2015年の「新オレンジプラン」では「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で 自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことを基本理念とし、介護者への支援を推進する施策として、全国で認知症カフェ設置の動きが進んでいます。
認知症カフェの概要
認知症カフェの特徴とは?
認知症カフェとは具体的にどんな場なのでしょうか。各カフェによって運営スタイルは様々ですが「気軽に参加でき、当事者や家族が楽しめると共に、気軽に情報交換ができる場所」という主旨で開催されています。
認知症の人と家族の会が行った調査では、以下のような特徴が挙げられています。
1.認知症の人とその家族が安心して過ごせる場
2.認知症の人とその家族がいつでも気軽に相談できる場
3.認知症の人とその家族が自分たちの思いを吐き出せる場
4.本人と家族の暮らしのリズム、関係性を崩さずに利用できる場
5.認知症の人と家族の思いや希望が社会に発信される場
6. 一般住民が認知症の人やその家族と出会う場
7. 一般の地域住民が認知症のことや認知症ケアについて知る場
8.専門職が本人や家族と平面で出会い、本人家族の別の側面を発見する場
9.運営スタッフにとって、必要とされていること、やりがいを感じる場
10.地域住民にとって「自分が認知症になった時」に安心して利用できる場を知り、相互扶助の輪を形成できる場
※出所:「認知症カフェのあり方と運営に関する 調査研究事業 報告書」(平成24年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業)[pdf]
どこが運営しているの?
認知症カフェの運営は様々な団体が行っています。
市町村などの自治体や地域包括支援センター、医療機関などの公的機関はもちろん、NPO 法人や社会福祉法人、介護サービス施設や事業者などの民間団体が多いのが現状です。中には認知症の当事者が主催するカフェもあります。
スタッフはどんな人?
民生委員や家族会のメンバー、認知症サポーターや地域のボランティアといった専門職以外の人たちが支援スタッフとして多く携わっています。
他には、医療職や福祉の仕事に携わる介護職、地域の行政職員や教職員なども参加し、多岐に亘る職種の方がいるため、気軽に相談ができることも魅力となっています。
どんなことを行うの?参加費は?
認知症カフェの参加費用は100円~2,000円程度と、ほとんどがワンコイン~少額に設定されており、無料で開催しているケースもあります。
では、実際に認知症カフェではどのようなことが行われているのでしょうか。主催者によって内容は様々ですが、多くのカフェが実施している内容をまとめました。
お茶を飲みながらの情報交換
デイケアなど、決められたプログラムに参加するのではなく、自らの意思でお茶を飲みに行く感覚で参加できるのが認知症カフェ。リラックスした雰囲気の中で、共感できる立場の人々が日々の困りごとなどを「おしゃべり」することで、情報交換が行えます。 ほぼ全てのカフェでお茶とお菓子が提供されており、中には食事を提供するカフェもあります。共にお茶や食事を楽しむことが、和やかなコミュニケーションに一役買っていると言えるでしょう。
専門職を招いた講座や勉強会
介護や医療の専門職のほか、近隣のお店の方や警察官、弁護士といった、地域に根ざした様々な専門家が講師をつとめ、日々の暮らしに役立つ講座や認知症に関する勉強会を開きます。
相談
専門職の方も多く参加する認知症カフェは、生活する上での困りごとや制度についてなど、気軽に相談できる場でもあります。
病院やケアマネージャーに相談するほどでも…というようなちょっとした相談ごとも、気楽なおしゃべりの中で解決することもあるようです。
レクリエーションやアクティビティ、イベントなど
当事者同士が交流できるゲームやイベント、国内外の好事例を参考にしたアクティビティなど、各カフェによって様々な工夫がされています。
例えば、映画上映会やコンサート、カラオケ大会などの娯楽や、園芸やアロマテラピー、パソコンなどの教室、体操や脳トレーニングなどの指導など、各カフェが様々な趣向を凝らしています。認知症当事者がスタッフとなって役割を持つ場面もあり、意欲の向上に役立っています。
認知症カフェのメリット
認知症カフェの利用で得られるメリットについて、認知症当事者、介護する家族それぞれの立場から見ていきましょう。
認知症当事者
・出かける目的や場所ができることで、引きこもり防止に
・地域活動への参加で社会との関り・役割を持てる
・同じ状況の仲間や、理解者の存在により安心感を得られ、気兼ねなくおしゃべりができる
・趣味や楽しみができる
・地域の支援者と出会える
・顔を合わせることで、状態の変化の兆候を周囲が気づける環境を得る
このようなメリットを享受することは、自分らしさを取り戻し、活き活きとした生活につながります。認知症カフェへの参加が刺激になり、症状が緩和する方も多いのだそうです。
介護する家族
・同じ立場の介護家族に出会え、心の負担や孤独感から解放される
・介護についての工夫やアドバイスなどの情報を、家族同士で交換できる
・専門家から様々なサービスや介護知識を得られる
介護する家族にとっては、認知症カフェがストレス解消の場となると同時に、有益な情報を気軽に得られる貴重な機会にもなっています。
あなたの街にも認知症カフェはある?

最寄りの地域包括支援センターに問い合わせる
お住まいの地域にある地域包括支援センターに問合せてみましょう。担当のセンターが分からない場合は、市役所・区役所などで教えてくれます。
地域包括センターは認知症に限らず介護に関する多くの情報が集まっており、高齢者の暮らしを地域でサポートする拠点となっています。
認知症カフェが掲載されたマップを提供している地域もあります。以下は認知症カフェの情報が掲載されている地方自治体のサイトの一例です。
・東京都(世田谷区)
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/105/911/913/d00143440.html
・東京都(板橋区)
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/069/attached/attach_69068_1.pdf
・大阪府
http://www.pref.osaka.lg.jp/kaigoshien/ninnshishou-gyakutai/caffe.html
インターネットで検索する
インターネットで認知症カフェの情報を入手できます。例えばお住まいの地域と認知症カフェという2つのワードを検索画面に入力すれば、該当する認知症カフェの情報が得られるでしょう。
認知症カフェを検索するサイトなどもありますので利用してみると良いでしょう。
下記のサイトでは全国の認知症カフェを探すことができます。
おわりに
調べてみると非常にたくさんの認知症カフェが開催されていることが分かります。まずは試しに参加して、自分に合ったカフェを見つけることをお勧めします。
認知症は誰でも発症する可能性のある病気であり、自分、もしくは家族が発症しても、正しく対応していけば、活き活きと日々を過ごすことができるはずです。仲間や地域の人たちと協力しながら、当事者も、そして家族も笑顔でいられるより良い社会を作っていきましょう。