認知症介護の注意点:入浴の配慮とコツ
1. 浴室にはどんな配慮が必要か
認知症の症状により、ボディーシャンプーや石鹸を食べ物と勘違いして口に入れることもあるので、それが何であるかを解かるように印をつけたり、いつも同じ場所に置いたり、色をつけて区別する工夫をしましょう。
また、浴室のハード面での配慮としては浴室は滑りやすく、転倒事故が起こりやすい所ですので、床や浴槽内は滑り止めをし、浴槽の出入りの為の手すりもつけましょう。また、浴室へ入るのに段差をなくす事ですが、床にスノコを敷く事でも段差の改善になります。
2. 入浴・シャワー時の注意とコツは?
湯の温度が分からずに熱湯や水を浴びてしまうことも考えられるので、温度設定や脱衣室の室温設定などは必ず介護者がしていきましょう。
湯の温度は個人差がありますが、高齢者は熱い湯が刺激となり、身体的不調をきたす危険性があるので、若干ぬるめに設定します。入浴時、必ず本人に湯の温度の確認をしてもらってから入浴すると良いでしょう。体を洗う行為もできるところは自分でしてもらい、できないところだけ介助していきます。入浴に使用するもの以外のお風呂用洗剤等は高齢者の目の届かないところに保管しておきましょう。また、体力の消耗も大きいため、入浴後は、身体への負担はさけ、脱水にならないように水分補給を忘れないようにしましょう。
3. 入浴を嫌がるのは?
家の中での高齢者の転倒防止策としては次のような事があげられます。
(1)段差をなくす
(2)床材を滑りにくいものにする
(3)廊下や床等に滑りやすいマット等は置かない
(4)キャスター付きの家具はストッパーをかけておく
(5)電気のコード類は隅に固定する
(6)照明は明るくする
4. 一日に何回も風呂にはいる
介助者の方が可能であればできるだけ、ご本人の意向に沿えるように実施していくことが望ましいでしょう。
5. 風呂に入っても、洗わずに出てくる
自分でできるところはしてもらい、できないところを介助していきます。
無理に洗おうとすると本人の自尊心を傷つけますので、焦らず反応を見ながら今日は頭だけ、片足だけというように徐々にできるようにしていきましょう。湯船の中でタオルを使って背中など洗うのも一つの方法だと思います。
6. 風呂に入り、湯につかっていつまでも出てこない
湯船に入ったまま出ようとしない人がいます。
このような認知症の高齢者はお風呂の意味がわかっていない場合が多く、口で説明しても理解してもらえません。こんな場合はその高齢者が興味をひく事、今入浴している現実から他に興味を持って頂くような声かけをしましょう。夕食のお時間ですからとか、美味しい果物が届いておりますので食べましょう、とお風呂から出て何かをやる状況を作ります。それでも出てこない時は、湯船の栓をぬく方法もありますが高齢者にストレスを与えないように注意しましょう。
7. お風呂でシャワーや蛇口が使えない
基本的に1人での入浴は危険が多いので、見守りましょう。
その際にシャワーを操作しながらお湯の設定をして、シャワーの操作の動作を見てもらいながら声かけをして、シャワーを使って頂きます。お一人の入浴の場合はお風呂のお湯を使って流して頂くほうが安全でしょう。最近のお風呂のシャワーコックや蛇口には斬新なデザインの物やいろいろな機能のついた物もあり、昔の道具の使い方しか記憶に残っていない認知症の高齢者にとっては使いにくいでしょう。そんな場合は高齢者が昔使っていたタイプの蛇口に変えてみるのも一つの方法です。また、浴室に昔ながらの湯桶を置いておくのもいいでしょう。
8. 介助が大変。入浴回数を減らしても良いか?
高齢者の身体介助の中で一番労力を必要とするのが入浴介助です。
入浴サービスや、いろいろな社会資源として、デイサービスやショートステイを利用しましょう。皮膚がデリケートですので、床ずれやおむつかぶれがないように配慮し、場合によっては週に1~3回でよいでしょう。入浴できない時は体を拭いたりして、できるだけ清潔にしましょう。
9. 入浴の時に注意する事は?
高齢者が一人で入浴できる場合でも、熱い湯を出したり、シャンプーやリンスなどのボトルの区別がつかなかったりします。
途中でさりげなく「背中を流しましょう」と中に入り手助けするのもいいでしょう。また、入浴に使用するもの以外のお風呂用洗剤等は、高齢者の目の届かないところに保管しておいた方が安全でしょう。 お風呂場は特に滑りやすいので床の清掃はこまめに行い転倒に注意しましょう。
10. 自宅で入浴が無理な時は ?
入浴を手伝う人手が足りなかったり、浴室等の問題で自宅で入浴が困難な場合は訪問入浴サービスの利用を考えましょう。
移動入浴車が自宅を訪問し高齢者の入浴を行います。デイサービスやデイケアで入浴のサービスを受けることも出来ます。