記憶障害 記憶障害の種類と対応

記憶障害とは、自分の体験した出来事や過去についての記憶が抜け落ちてしまう障害のことを言い、認知症の中核症状のひとつです。 ここでは記憶障害とはどのようなものか、対応や対策について説明します。


この記事の目次
  1. 記憶障害とは
  2. そもそも”記憶”とは?
  3. 記憶のメカニズムと認知症における記憶障害
  4. 記憶の分類
  5. 記憶障害の種類
  6. 短期(即時)記憶障害
  7. 長期(近時・遠隔)記憶障害
  8. エピソード(出来事)記憶の障害
  9. 意味記憶の障害
  10. 手続き記憶の障害
  11. 記憶障害の進行
  12. 記憶障害がでたときの周囲の対応
  13. 本人に安心してもらう
  14. 環境を整える
  15. 新しいことを覚えるときには繰り返す
  16. 記憶障害の改善策

記憶障害とは

記憶障害とは、自分の体験した出来事や過去についての記憶が抜け落ちてしまう障害のことを言い、認知症の中核症状のひとつです。自覚のある物忘れとは違い、自覚がなく、日常生活に支障が出てきます。具体的には以下のような症状が見られるでしょう。

新しい出来事が覚えられない。または覚えたはずなのにすぐに忘れてしまう
例)「病院の受診日時や約束を忘れてしまう」
覚えていたことが思い出せない
例)「人の名前が出てこない」「今まで自己管理していた内服薬を管理できなくなる」

最近のことからだんだん忘れていくという特徴があります。そして、中核症状全般にいえることですが、進行とともに悪化していきます。

そもそも”記憶”とは?

記憶のメカニズムと認知症における記憶障害

新しい情報(体験)が脳に保存され、その情報が再生されることを記憶と言います。新しい情報が弱い刺激(重要ではない情報)の場合、一時的には覚えているものの、消去されます。重要な情報である場合は、一時的に保存された後に長期間保存され、必要に応じて思い出します。

厚生労働省では、関心のあるものを一時的に捕らえる器官である海馬を「イソギンチャク」、重要な情報を頭の中に長期に保存する機能を「記憶の壺」にたとえ、認知症による記憶障害を以下のように説明しています。

人間には、目や耳が捕らえたたくさんの情報の中から、関心のあるものを一時的に捕らえておく器官(海馬、仮にイソギンチャクと呼ぶ)と、重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壺」が脳の中にあると考えてください。いったん「記憶の壺」に入れば、普段は思い出さなくても、必要なときに必要な情報を取りだすことができます。(中略)
認知症になると、イソギンチャクの足が病的に衰えてしまうため「壺」に納めることができなくなります。新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。さらに、病気が進行すれば、「壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。

※出所:厚生労働省 認知症を理解する

記憶の分類

認知症に関する記憶には、長さでの分類には大きく短期(即時)記憶、長期(遠隔)記憶があり、内容での分類にはエピソード(出来事)記憶、意味記憶、手続き記憶があると考えられています。

※作図:認知症ねっと

記憶障害の種類

短期(即時)記憶障害

短期記憶とは、記憶を貯蔵する時間が数十秒から1分程度と短い期間のみ残る記憶のこと。認知症の方は、新しいことを覚えにくく、 具体的には、今日の日付が分からない、どこに物を置いたか忘れる(いつも探し物をしている)、何度も同じことを聞くなどの症状が見られるようになります。これを短期記憶障害といいます。

認知症初期には比較的直近の記憶から失われていき、ついさっきの出来事が思い出せなくなり、次第に思い出せない事が増えていきます。

長期(近時・遠隔)記憶障害

長期記憶には、記憶を貯蔵する時間が数分から数日間残る場合(近時記憶)と、数日以降発病する以前に学習した記憶が残る場合(遠隔記憶)とがあります。

一般的に知られている「祝日の名前」や「自分が通った学校の名前」「子供の消息」「自分の職業」についてなどの出来事についても、認知症が進行すると忘れてしまい、最終的には家族の名前や顔も忘れていくなどの症状がみられます。これを長期記憶障害といいます。

エピソード(出来事)記憶の障害

学歴や職業など、自分が生活してきたことや体験したこと(エピソード)そのものを忘れてしまう障害です。本人は体験自体が抜け落ちているので、周囲と話がかみ合わなくなります。

意味記憶の障害

ものや言葉の意味を忘れてしまう障害です。「あれ」とか「それ」などの表現が多くなり、意思疎通が難しくなってきます

手続き記憶の障害

手続き記憶とは、本人が繰り返し学習や練習によって身につけた技術や、無意識のうちに記憶していることです。例えば、自転車に乗る、泳ぐ、スキーを滑る、ピアノを弾くなどです。認知症になっても、比較的体得した記憶は残りやすいと言われています。

記憶障害の進行

一般的に、認知症の進行度に合わせて記憶障害の症状も悪化していきます。

※作図:認知症ねっと

記憶障害がでたときの周囲の対応

本人に安心してもらう

記憶障害は、本人に自覚がありません。そのため、度重なる物忘れや記憶が薄れていくことへの不安や焦りから、怒ったり混乱したりする場合もあります。記憶障害で最も不安になるのは本人です。

本人に体験そのものが抜け落ちてしまっていると、本人にとってその体験(事実)は存在しないことになります。こうして本人が認識している世界と、周囲の人が認識している世界にズレが生じます。本人にとっては、自分の認識している世界こそが真実なので、周囲の人が事実を伝えても、本人はウソを言われていると認識します。
つまり、本人の言動を訂正することは、本人からしてみれば、自分の言動を否定されたり、抑制されている感覚になります。

周囲の人は、本人の言動を訂正しがちになりますが、それをすればするほど、本人の不安は高まり、逆効果となるでしょう。周囲の人が本人に合わせる必要性があるというのは、こういう理由です。 まずは、本人の言動を笑顔でいったん受け止めて、安心していただくことが対応の第一歩となります。

環境を整える

記憶障害を持つ方にとっては、その事実と共存しながら安心して生活できる環境に整えることが重要となります。

規則正しい生活を送るためにも、1日のスケジュールを組みましょう。また、そのスケジュールを時計の隣に貼るなど、目につきやすいところに貼ると効果的です。また、カレンダーを活用し、予定を書き込みましょう。予定の時間を知らせるために、スマートフォンのカレンダー機能を利用し、時間になったら鳴るようにすることも効果的です。通院曜日や時間はなるべく変えないようにしましょう。

また、日々使用する物品は置く場所を固定し、使用後はすぐに定位置に戻しましょう。部屋の模様替えなどは混乱する要因になりかねませんので、注意が必要です。

新しいことを覚えるときには繰り返す

新しいことを覚える際のポイントとして、一つずつ覚えること、繰り返し反復練習することが重要です。言葉だけでなく絵を使う、言葉と身体を使う、メモを貼るなど、覚えやすい方法を本人と相談しながら方法を見つけましょう。

記憶障害の改善策

かかりつけ医に相談して適切な処方を

基本的に進行性の障害ですので、改善は難しいといえますが、1999年と2011年にそれぞれ進行を遅らせる薬が処方されるようになりました。 主治医に本人の症状や状態を具体的に説明し、相談されたうえで、本人に合った薬と分量を処方してもらうとよいでしょう。

また周囲の人や環境が、本人の不安を高めるような状態も、認知症の進行を促進させてしまう可能性があるので、対応にも配慮することが重要です。


このページの
上へ戻る