認知症による徘徊

認知症になると、家の中や外を歩き回る行動が見られます。BPSD(認知症の行動・心理症状)のひとつ「徘徊」です。このページでは、認知症による徘徊について詳しく解説します。

この記事の目次
  1. 徘徊とは
  2. 本人にとっては目的のある行動です
  3. 行方不明や事故などの可能性も
  4. 徘徊が起こる原因
  5. 中核症状の影響
  6. 不安やストレス
  7. 前頭側頭葉型認知症の特徴的症状
  8. 徘徊する理由
  9. 何かを探している
  10. 徘徊が起こったら
  11. 理由を聞いてみる
  12. 無理に止めない
  13. 警察に通報する
  14. 徘徊への対策
  15. トイレに工夫を
  16. 一緒に歩く
  17. 玄関の鍵は手の届かない場所へ
  18. 住所や名前を服につけておく
  19. デイサービスなどを利用する
  20. 自治体のサービスを活用する
  21. 家族が気持ちを切り替えてみる

徘徊とは

見当識障害や記憶障害などの中核症状出現の影響や、ストレスや不安などが重なって、絶えず歩き回る「徘徊」が起こることがあります。徘徊がみられた場合は、落ち着いて声をかける、無理に徘徊をやめさせない、一緒に歩くなどの対応が大切です。

本人にとっては目的のある行動です

家の中や外を絶えず歩き回るなど、客観的には目的不明に見えますが、本人にとっては、はっきりとした目的がある場合が多いのです。例えば、農業に従事していた男性が夜中に「畑に行ってくる」と言って家を出ようとしたり、家の中であれば探し物をしていることも考えられるでしょう。本人にとっては切実な行動である場合が多いことを理解しましょう。

行方不明や事故などの可能性も

家の中で徘徊が起こる場合、安全対策を取るなど、ある程度対応ができます。しかし、外に出ての徘徊は、事故や行方不明という事態になる可能性も出てきます。

警視庁によると、平成28年における「認知症または認知症の疑い」による行方不明者数は15,432人と言われています。地域住民や警察に保護されたとしても、認知症が進んでいた場合、自分の名前や住所などが的確に答えられないことも多いため、どこの誰なのかを突き止めるのが難しくなってしまうのです。


認知症では周りを気にかけたり、注意することが難しくなるので、車が来ていても道路の真ん中を歩いたり、電車が来ているのに線路内に入ることもあり、事故に遭う危険を伴います。夏の炎天下では、脱水症状を起こす危険もあります。

徘徊は介護者にとって対応が難しい症状ですが、本人にとっても、時には命に関わるものなのです。


徘徊が起こる原因

認知症の中核症状に加え、不安やストレスなどが発端となり、徘徊が出ると考えられています。

中核症状の影響

記憶障害

直近のことを覚えられなくなるため、最初は目的を持って出かけても、何をしに来たのかを思い出せず、徘徊に繋がることがあります。

見当識障害

見当識障害によって、自分が今いる場所がわからなくなり、不安からあちこち歩き回る行動に出ることがあります。

判断力の障害

適切な判断ができなくなるため、道に迷っても人に聞く、電車に乗るなどの判断が難しくなります。

不安やストレス

上記のような中核症状が出ている上、不安やストレスが重なった結果、行動・心理症状として徘徊が起こることがあります。また、じっとしているのが難しくなる「多動」の症状が出て、部屋をうろうろする場合もあります。

前頭側頭葉型認知症の特徴的症状

認知症の中でも、前頭側頭葉型認知症では、同じ行動を繰り返す症状が特徴として挙げられます。

家の中であれば、ベッドから家を一周してまたベッドに戻る、という行動を繰り返したり、外では毎日決まったコースを必ず1周するなど、同じパターンを繰り返す症状です。他の認知症による徘徊と異なり、何かを探して歩き回っているわけではないため、迷子にはなりにくいと言われています。ただし、注意ができないという点は同じなので、事故に遭う危険性は伴います。

徘徊する理由

何かを探している

冒頭にもあるとおり、本人にとっては徘徊には目的があり、多くは何かを探しているケースになります。しかし、探しているはずのものが見つからず、探し続けてしまうことも多いでしょう。他に、最初は目的があっても途中で何を探しているのかを忘れ、ただ歩き続けるという場合もあります。

認知症では疲れるという感覚も鈍くなるため、夜通し歩き続け、遠くまで行ってしまう人もいます。

徘徊で特に多く見られるのは、以下のパターンになります。

家の中で部屋やトイレを探す

家の中で歩き回る時には、トイレが見つからなかったり、部屋がわからなくなって探しているケースが多くみられます。

帰宅願望

外に出かけてしまう場合、今いる場所が自分の家ではないと感じ、落ち着かずに外へ出てしまう、本当の家を探しに出かけてしまうというケースがあります。

仕事に出かける

仕事をしていると思い込み、職場を探して出かける事もあります。


徘徊が起こったら

実際に徘徊が起こった場合の接し方や、対応について説明します。

理由を聞いてみる

家の中での徘徊の場合

家の中を徘徊している時は、トイレや部屋を探している場合も多いため、「部屋へ帰りましょう」「トイレに行きましょう」など、声をかけてみてください。

外へ出てしまう場合

家の中に、本人にとっての不安要素はないかを考えてみてください。幻覚が見える人では、知らない人が家にいるという恐怖を感じ、外へ逃げる人もいます。不安や焦りが募って徘徊に繋がるケースがありますので、本人の言葉に耳を傾けましょう。

無理に止めない

徘徊を無理やり止めたり、責めるような口調で注意したりせず、落ち着くまで一緒に歩いたり、気持ちを逸らす努力も大切です。徐々に気持ちが落ち着いてくると、自分から部屋や家に戻る場合もあります。

警察に通報する

外に出て行方不明になっている場合は、速やかに警察に連絡しましょう。先述の通り、事故に遭う危険性もあるため、家族だけで探そうとせず、まずは通報してください。

徘徊への対策

徘徊の症状自体を消すことは難しいですが、徘徊に伴う危険に対して回避策を講じることはできます。また、対応によっては徘徊の頻度を減らせる場合もありますので、参考にしてください。

トイレに工夫を

トイレの場所を分かりやすくする

トイレの場所がわからなくなって徘徊する場合は、トイレのドアにわかりやすいサインを貼っておくなどの工夫が効果的です。部屋をトイレの近くに移動するのもよいですが、環境が変わったことによるストレスを受ける場合があるので注意が必要です。

排泄の間隔をみながらトイレに誘導する

トイレの場所がわからず、探しているうちに失禁してしまう場合があります。日々の習慣をチェックし、排泄の間隔をみながら「そろそろお手洗いに行きますか?」など声をかけてトイレに誘導してみましょう。

一緒に歩く

徘徊している時は、部屋へ誘導しようとすると怒る場合があります。そのようなときは、徘徊することに差し支えがなければ、気が済むまで歩いてもらうのもよいでしょう。転倒などの危険もありますので、できれば見守りながら一緒に歩いて、落ち着いてから部屋に戻るのがよいでしょう。

玄関の鍵は手の届かない場所へ

外に出かけてしまう方には、玄関の鍵を手の届かない場所に付け替えるのもひとつの方法です。窓を開けて出ていく人もいるので、その場合は窓の鍵も開けにくいものに変える必要があります。玄関の鍵をかけ忘れた時のために、ドアが開いたら音が鳴るような工夫もしてみましょう。

住所や名前を服につけておく

1人で外に出てしまう場合は、GPS機能の付いた小さなアクセサリーなども販売されているので、利用をおすすめします。また、服の内側や靴などに名前と連絡先を書いたワッペンのようなものをつけておくのも効果的です。

デイサービスなどを利用する

じっとすることができずに徘徊する場合、無理に止めさせるとストレスを与えてしまう恐れがあります。デイサービスなどで出かける習慣があると、家で落ち着く場合がありますので、利用するのもいいでしょう。家族の負担を軽くするためにも、外部サービスの活用は有効です。

自治体のサービスを活用する

徘徊が発生すると、行方不明や事故の心配など、家族の精神的負担も大きくなりがちです。徘徊は社会問題として対策が急がれていますので、周りの人に迷惑がかかると思い込まずに、近所の方や交番、民生委員などにもあらかじめ周知しておきましょう。外で見かけた場合には家族に連絡が来るよう手配しておくことが重要です。

自治体では、徘徊者に対して見守りネットワークサービスを始めています。事前に登録を行い、徘徊発生時に連絡することで、発見の協力をしてもらうことができます。ご自身の地域の該当サービスについては、自治体や警察署に問い合わせてみましょう。

家族が気持ちを切り替えてみる

家族は、徘徊に対して不安やストレスを抱えがちですが、解決や対策に向けて気持ちを切り替えることも大切です。何が原因で歩いているのかをしっかり見つけ出し、適切な対応を心がけましょう。

外へ1人で出てしまうのは危険ですが「家の中を歩き回るのは良いのではないか」と思うくらいの気持ちも必要です。家の中でも、敷居などのちょっとした段差で転倒する場合もありますので、段差をなくしたり、ぶつかってケガをするような物は置かないようにする等の工夫についても目を向けてみましょう。



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