若年性認知症(若年性アルツハイマー等)

「若年性認知症」とは、65歳未満で発症する認知症を言います。若年性と高齢者での認知症の病理的な違いはなく、もちろんアルツハイマー型だけではありません。ここでは若年性認知症の主な症状や初期症状、またその原因について詳しく紹介します。


この記事の目次
  1. 若年性認知症とは
  2. 高齢でなくとも認知症になる?
  3. 患者数や男女比は?
  4. 原因は高齢者と違う?
  5. 若年性認知症の原因となる病気とは?
  6. 脳血管性認知症
  7. アルツハイマー型認知症
  8. 若年性認知症の症状
  9. 中核症状
  10. 行動・心理症状(BPSD)
  11. 若年性認知症は早期発見・早期治療が重要
  12. 診断までに時間がかかる場合も
  13. 早期発見と早期治療の重要性
  14. 若年性認知症になったらまずすべきことは?
  15. 家族の介護力チェック
  16. 地域包括センターの利用
  17. 免許の返納
  18. 若年性認知症の方への対応
  19. 告知時には家族がサポートを
  20. 無理強いはしない
  21. 本人の話を否定しない
  22. ケアや介護の工夫
  23. 生活習慣を見直して再発防止
  24. 適度なリハビリテーション
  25. 初期の物忘れに対する工夫
  26. 迷子対策

若年性認知症とは

高齢でなくとも認知症になる?

認知症は高齢者だけが患うものではなく、若い世代でも発症することがあります。65歳未満の人が発症する認知症を総じて「若年性認知症」と言います。

物忘れが出たり、仕事や生活に支障をきたすようになっても、年齢の若さから認知症を疑わなかったり、病院で診察を受けても、うつ病や更年期障害などと間違われることもあり、診断までに時間がかかってしまうケースが多く見られます。


若い人の認知症の多くがアルツハイマー病で、発症の多くが40歳後半から60歳代前半の発症です。その発見は、高齢者と違って、もの忘れでなく仕事上の失敗や奇怪な精神症状の出現で周囲が気づくことが多いようです。
(中略)
若年者の場合もエピソード記憶の障害は中核の症状ですが、多くは、記憶の障害が他者にわからないように話を合わせたり、うまく取りなしたり、ごまかしたりするので、周囲は気づかないことが多いようです。一方で、年齢が若いので「物忘れ」と思わず、「集中していなかったから、忙しかったから」などと違うことに振り替えてしまうのです。
ユッキー先生の認知症コラム 第38回 若い人の認知症より

患者数や男女比は?

厚生労働省が2009年に発表した若年性認知症の調査によると、患者数は調査時点で4万人弱、人口10万人(18-64歳)あたり若年性認知症者数は、47.6人になります。 男性の方が女性よりも多く、推定発症年齢の平均は約51歳でした。

原因は高齢者と違う?

若年性認知症は、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の2つが圧倒的に多く見られ、2疾患で6割を占めます。脳血管性認知症の割合が多いことは、若年性認知症の特徴といえるでしょう。

その他患者数は少数ですが、事故などで脳に損傷を受けたために起こる頭部外傷後遺症、前頭側頭葉変性症(ピック病)、多量のアルコールを飲む事で脳が委縮するアルコール性認知症、レビー小体型認知症などが見られます。

若年性認知症の基礎疾患の内訳

※出所:若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について


若年性認知症の原因となる病気とは?

若年性認知症の大きな割合を占める2つの原因疾患について簡単に説明します。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳に梗塞ができて血流が低下したり、血管が破れて出血するなど、脳の血管障害が原因で起こる認知症です。

脳梗塞、脳出血・くも膜下出血などの発作により、意識障害、麻痺、言語障害などの急性期症状が現れます。

急性期の症状を脱し回復期になっても、麻痺や言語障害が残る場合もあり、身体が思うように動かないことへの失望や虚無感を感じることがあるでしょう。 その他、記憶障害、注意力や意欲の低下、性格がガラリと変わるというようなことも起こります。このような状態を高次機能障害と言い、身体的な障害と高次機能障害の症状が複雑に絡み合い、認知症の症状として現れます。

リハビリテーションを行うと共に、血管が詰まらないよう予防することが大切です。

アルツハイマー型認知症

要因について全ては解明されていませんが、脳に余分なたんぱく質が溜まることにより神経細胞が破壊され、脳が萎縮することが原因といわれています。

また、ごく稀であり、完全には解明されていませんが、若年性アルツハイマーについては遺伝による「家族性アルツハイマー病」がみられることもあります。家族や親族にアルツハイマー型認知症がある場合は、可能性があると言えるでしょう。


抑うつ、意欲の低下、感情の乏しさなどの症状が初期に現れます。仕事の効率が下がってもそのことを相談しようとせず、消極的になる人も多いようです。仕事が滞っても、それを解決しようとする気持ちが低下し、突然仕事を休むようになる場合もあります。

若年性認知症の症状

中核症状

記憶障害や見当識障害

物忘れが見られ、数日前の出来事が思い出せない場合や、大事な予定や約束を忘れてしまうことがあります。忘れた事を指摘されても、予定を組んだ事自体を忘れてしまうため、「あっ、忘れていた」と思い出せません。
今日の日付や、自分がいる場所がわからなくなる「見当識障害」が起こります。そのため、書類などに日付を書こうとしても書けない、よく出かける場所で迷子になるといったことが度重なり、おかしいと気付くことになります。



理解力・判断力の低下

料理が上手だったのに、手順がわからず出来なくなったり、物をどこに片付けたらよいかわからなくなり、部屋が散らかってしまう場合もあります。計算が出来なくなり、買い物をしても小銭を考えて出せなくなる場合もあります。運転時には車線をはみ出したり、ブレーキが遅くなるなど危険運転になる事が多くなります。 物の共通点や違いがわかりにくくなる、抽象能力や判断力の障害とは?

実行機能障害

同じ物を買ってくる、毎日同じ料理を作るといったように計画性がなくなります。また、電化製品や器具などの使い方が分からなくなります。

アルツハイマーにおける認識力の低下

特にアルツハイマー型などでは、ドアなどが見えているのに、部屋から出られないとグルグル部屋を回ってしまったり、目の前にある物を取ってと言っても、言われたものと目の前にある物が結びつかず、取れなくなるといった症状が出ます。

アルツハイマー型のチェックとして「時計を描いてもらう」という方法があります。 アルツハイマーを発症している場合、時計の文字盤や、指定した時間の針を正しく描けない場合が多くなるので、目安となるでしょう。


レビー小体型における幻視やパーキンソン病症状

レビー小体性では高齢者の症状と同じく、幻視を訴える場合が多く、何もない所に向かって話しかけたり、怒ったりするため、精神疾患と間違われる場合もあります。また手が震えたり、動きが遅くなるパーキンソン病に似た症状が見られやすくなります。


行動・心理症状(BPSD)

中核症状によって生活しにくくなった場合に起こりうる二次的な症状のことを言います。症状の出方は人それぞれ個人差があります。

妄想や幻覚

大事な物をしまい込みどこにしまったか忘れてしまう、もしくは、しまったこと自体忘れてしまい、「泥棒に入られて、盗まれた!」という物盗られ妄想が起こる場合があります。

不安・焦燥・抑うつ

記憶がなくなる・忘れてしまうことに対しての不安が募り、イライラ、涙もろくなる、消極的になるなどがみられます。

徘徊

本人は目的をもって歩いているものの、実際は妄想や幻覚によって徘徊している場合や、入院や入所、リフォームなどによる住居環境の変化によって徘徊する場合、トイレの場所が分からなくなった場合などがあります。

徘徊がみられた場合、その目的を聞くこと、否定しないことが大切です。例えば、「買い物に行く」と言って玄関から出て行きそうになった場合、「夜だから明日にしましょう」や家の周りを一緒に一周するといった方法もあります。

不潔行為

トイレの場所が分からない、トイレの使い方が分からない、トイレまで間に合わず失禁した場合などに、汚れた下着を隠したり、汚れた下着のままで過ごすといった不潔行為がみられることもあります。本人も失敗感があり、隠したい気持ちが働くためです。

トイレの場所や使い方が分かりやすいように張り紙をする、排泄の間隔をみながら時間をみて誘導する、汚れた下着を隠しても問いたださないといった対応をしましょう。

若年性認知症は早期発見・早期治療が重要

診断までに時間がかかる場合も

若年性認知症の場合、仕事や家事、育児など社会的役割を担う年齢層の方が発症することが多いでしょう。そのため、うっかり忘れてしまう場面やなんとなくやる気がない、何事に対しても億劫になる、などの症状が現れても「日々の疲れのせい」「更年期障害かも」というように、他の原因を考える恐れがあります。その結果、受診までに時間がかかってしまうのです。

また、若年性認知症の初期症状は、正常圧水頭症、脳腫瘍、うつ病、更年期障害などの他の疾患と鑑別がしにくいため、診断にたどり着くまでに時間を要する場合もあります。

早期発見と早期治療の重要性

早期発見

「忘れっぽくなった」「同じものを買ってくる」「仕事の段取りが遅くなる」「失敗が増える」「やる気が起きない」などと感じた場合、受診をしましょう。また、本人は感じにくいこともありますので、家族の方たちも「あれ?」と気づいた場合は、受診を勧めましょう。

早期診断

早めに受診をすることで、診断までに要する時間を短くすることができます。

早期治療

早めに治療に入ることで、症状の進行を遅らせたり、生活の改善を図ることが可能です。また、自分の病気を知り、今後の生活や仕事への準備ができます。

本人が自分でおかしいと気付く事は難しいため、家族や会社の同僚、友達などが気付き、受診を勧めましょう。神経内科や物忘れ外来などの認知症の診断が可能な施設に受診をしましょう。その際は、必ず家族も付き添って下さい。

若年性認知症になったらまずすべきことは?

家族の介護力チェック

若年性認知症の介護は長期に亘ることが予想されます。そのため、介護にあたる家族が介護力チェックを行い、足りない部分は何らかの対策を講じましょう。 今井幸充先生のコラムには、以下のようなチェック項目が挙げられています。

介護力チェック

健康状態のチェック
介護者が健康であることが介護する際の絶対的条件です。
補助介護者の有無
主たる介護をサポートする他の家族がいつも傍にいますか。いない場合は以下の対策画必要です。
経済状態のチェック
医療費や介護費などいろいろ経費がかさばります。計画的に資産を運用する策を考えてください。
他の扶養家族のこと
就学児童や他の就学者、また障害者など、扶養しなければいけない家族が同居していると、さらに大きな負担が強いられます。
介護が得意か、苦手か
介護の得意な人、苦手な人がいます。あなたは介護が上手ですか。
本人との関係性
長年、ご本人と生活を共にして、これまでの関係はどうだったか、自問自答してください。その関係性によっては介護の負担感が異なります。
ユッキー先生の認知症コラム 第40回 若年性アルツハイマー病のケア ~介護力チェック~より

地域包括センターの利用

若年性認知症の発症年齢は平均51歳前後、つまり働き盛りの人が発症することも多いのが現実です。一家の大黒柱を担っていた人が発症し、仕事が続けられずに大きな経済負担を強いられることもあります。収入の減少、配偶者の勤労と介護の両立、子供の養育費など、家族の関係性が変化すると共に、介護負担が大きくなることが懸念されます。

いざ介護を行うとなると、どこに相談して良いか分からない方も多いのではないでしょうか。まずはお住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談しましょう。

免許の返納

運転をする際には、同時に判断する能力が必要となります。そのため、認知症が見られる場合、高速道路の車線を間違えたり、信号を無視したり、アクセルとブレーキを上手く使えずスピードを出し過ぎるなど、事故につながるケースもあります。

家族が説明をして納得が得られる場合は返納をしましょう。納得が得られない場合、主治医や警察に相談をしましょう。道路交通法では、認知症と診断された場合、免許が停止となります。 ご本人のお気持ちやプライドも考慮すると共に、安全を第一に考えて行動することが重要です。


若年性認知症の方への対応

告知時には家族がサポートを

本人に認知症であると告知するかどうかというのは、よく問題になります。まだ仕事が出来ている段階で認知症だと告知を受けると、精神的な打撃は大きく、元々うつ傾向になりやすい状態であるため、それが悪化してしまう事も。しかし、理解力が残っている段階で告知を受ければ、本人の希望する治療法で治療が行えるというメリットもあります。告知をした場合は、家族の「一緒に乗り越えよう」というサポートが重要になります。

無理強いはしない

今までの様子と違ってしまい、家族も戸惑うことが多くなるでしょう。本人も家族も、できなくなったことに目が向きがちです。しかし、全てができなくなるわけではないので、一つひとつ着実にできることをしましょう。 介護拒否を示すこともありますが、無理強いをすると余計拒否が強くなったり興奮する場合があるので注意が必要です。


本人の話を否定しない

「物が無くなった誰かが隠した(盗った)」などと、物盗られ妄想が出現する場合があります。本人は無くなったと思っており嘘ではないため、否定しないでください。幻視なども、そこにはっきりいるように見えるため「嘘を言っている」などと否定しない事です。否定しても納得は出来ず、介護拒否を示したり、怒ったりするだけで、解決にはなりません。否定をせずに、気をそらす努力をしましょう。


ケアや介護の工夫

生活習慣を見直して再発防止

脳血管性やアルコール性の認知症では、生活習慣を見直し、再発の予防に努めることが重要です。バランスの良い食事を適量摂取しましょう。また、適度な運動によって肥満にならないよう注意すると共に、気分転換を図ることも重要です。

適度なリハビリテーション

進行を遅らせるためにリハビリテーションを行いましょう。リハビリテーションは脳に刺激を与え、活性化させます。例えば、音楽を聴いたり歌ったり、昔話を思い出しながら話をしたり、本を音読したり、簡単な計算をすることもリハビリテーションの一つです。ご本人の今までの趣味や特技を活かすのも効果的です。

重要なのは本人の負担にならないよう行うことです。無理強いするなど負担が大きいと、逆効果になります。

初期の物忘れに対する工夫

物忘れなどに対しては、日付欄に書き込める大きなカレンダーを用意し、予定を書きこみます。薬は1回分をまとめて小袋などに入れ、カレンダーに貼りつけるなどし、飲み忘れがないか確認出来るようにしましょう。


迷子対策

初期の段階でも迷子になる事があり、また症状が進行して徘徊が見られるようになると、迷子になっても連絡先が言えない場合があります。服の裾やカバンの中に名前や連絡先を書いたものをつけておきましょう。GPS 機能がついたものをカバンに入れておくのも迷子防止になります。



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